“「家族」はどこへ”
僕たちマザコン世代の家族
山口 崇(北海道大学工学部)
東大の新入生対象に東大生協が毎年行っている調査の中に「あなたの尊敬する人物は誰ですか?」という項目があって、その回答で数年前のトップが「母親」だったという話を本で読んだことがあります。なぜ母親なのかと言うと、「僕が東大に入学できたのもすべて母のおかげです。僕が今日あるのはお母さんの力があってこその事です。」ということらしいです。確かに名門私立や国立の学校に入学させるために幼稚園や小学校に通っている時から母親たちが子供を塾に通わせ、塾の送り迎えをし、夜食を作って子供と一緒に夜遅くまで付き合い、塾の月謝や私立学校の高額の受験料や入学金や授業料などを払うためにパートをしている現実では学歴社会の中で母親たちが子供たち以紊防・爐砲覆辰討い觧僂鯆垢ご峪匐,聾・討④燭錣韻任垢・蕁嵎貎董廚・嵯匹垢訖擁・離肇奪廚砲覆襪里睇垰弋弔任呂覆い任靴腓Α・・・奮阿凌祐屬里燭瓩防・爐砲覆辰篤・・佑和嵯匹気譴禿・海世隼笋六廚い泙后・韻譴匹癲嵎拔・鬚覆爾垢襪里任垢・・廚箸い・遡笋硫鹽悊・・?凾タ「母のため」とか「お母さんがしろと言うから。」では困ります。幼い時は私もそうでしたが母親の勉強しろという言葉やテストで良い点を取った時の母親の喜ぶ顔が勉強する理由だったと思います。しかしいつまでもこの状態でいるのは成長していないとしか思えません。自分自身の問題の答えは自分自身の中から見付けるべきだと思います。次に大人になりきれないマザコン少年の話を書きます。
「僕はお母さんの気に入った人としか結婚しない。」、この一言を幼い男の子が言ったのなら誰も変だとは思わずカワイらしい子供だと思うかもしれません。しかしこの一言はある大学生の言った言葉です。彼は二言目には「お母さんが・・・・。」と言うのです。見かけは身長一八○センチはあり剣道か何かやっていて、ものすごい偉丈夫でいつも二五○CCのバイクに乗っているという、テレビのドラマに出てくる様ないかにもマザコンという感じではありません。ある時彼があまりにも「お母さんが、お母さんが」と言うものだから彼と話をしていた人が「第三者に親のことを言うときは『お母さんが』とは言うもんじゃない。」と注意したそうです。すると彼はつぶらなひとみをパチッとあけて、その人の顔をじっと見て「どうして?」と聞き返したので、その人はあきれ返ったけれども彼はひたすら無知なんだと思って「第三者にはお母さんとは言わずに母と言うものだ。」と言ったそうです。すると彼は真面目な顔をして「僕はお母さんを尊敬してるから呼び捨てなんかできません。」と言ったそうです。作り話の様ですが現実にこういう大学生が存在するのです。しかし彼は本当に母親が気に入った人と結婚できると思っていたのでしょうか。彼の様にかなり母親べったりの子供の母親は子供べったりの母親だと考えてまず間違いないだろうと思います。この様な母親はどんなに気立ての良い結婚相手でも気に入ることはないだろうと推測できます。なぜなら母親にとって息子の結婚相手は自分の大事な息子を取り上げる人間でしかないからです。彼の前途は多難のようです。この話を女の人にするとかならず大笑いします。彼女たちはこんな人とは結婚しないと思っているのでしょうか。彼女たちも結婚して子供が生まれるといつの間にか自分たちが結婚したくないと思っていた様な男に自分の息子を育てるかもしれないのですから不思議な話です。
マザコン少年とその母親の話でこんなのもあります。長年の二人三脚の努力の末に大学受験にたどり着いたマザコン親子がいます。これまでの努力の成果を試す機会です、当然受験当日は母親が同行します。試験に合格すれば二人で勝ち取った栄光ですから息子だけではなく母親は自分も晴れの日を迎えたような顔をして入学式に行きます。入学すればしたで大学の試験期間中は下宿している息子の所へ行って試験勉強に専念させるために身の回りのことをすべてしてくれます。また下宿先が遠くなれば週に一回洗たくや掃除をするために息子の下宿に通う母親もいます。下宿が遠い場合は毎朝下宿している息子に長距離電話でモーニングコールをするという話もあります。もっとすごい例では下宿探しに同行してきた母親が生活が軌道に乗るまでしばらく息子と同居しようと思いながらずるずると居ついてしまうという話もあります。
これらの話を読んで多くの男性は自分はマザコンではないと思っていると私は思いますが日本人の多くの男性はマザコンではないでしょうか。マザコンというのは極端かもしれませんが多くの人たちは父親より母親により密接に関係してきたと思います。私もまたその一人です。
どうして先に述べた様なマザコン親子が現在増えつつあるのでしょうか。一つの理由として日本が豊かになったためだと思います。貧しい時代なら父親も母親も食べていくのが大変で子供にひもじい思いはさせたくないと一生懸命で働きますからそれだけで精一杯で母親が今日ほど子供に密着できなかっただろうと想像できるからです。第二の理由は洗濯機や掃除機などの電化製品の普及による母親の家事労働時間の短縮です。母親たちがあまった時間を子供たちのために使い母子の密着が起るのです。第三の理由は一組の夫婦が育てる子供の数が減少したことです。子供の数が減ればそれだけ子供にかかる費用も減るわけですから一番目の理由である家族が豊かになります。また一人よりは二人、二人よりは三人子供がいた方が母親の子供に対する密着度も分散されて薄くなると考えられるからです。第四の理由は学歴社会です。学歴社会の中では本当に限られた物差しで子供たちの能力を判断します。その物差しである偏差値というものは子供の学力の進度を知る上では非常に有効な面もありますがどんな子供も数字で評価してしまうために専門家でもない母親が一見して子供の能力(限られた物差しで評価された)を知ることができます。あまりにも分かり易いためにこの物差しで母親たちは自分の子供の能力を理解し、他の子供たちと比較し、子供の偏差値を上げるのに必死になるのです。第五の理由はこれさえ解決できればマザコン親子は存在しなくなるだろうと思われる理由です。それは母親自身の問題です。マザコン少年がなぜ生まれるかそれは子供の側に原因はありません。過剰な干渉と保護をしてきた母親の側の問題だからです。母親たちが娘でなく息子になぜこれまでに密着してしまうのかという事の一つの答えとして女性の社会進出を阻害してきたためであるという意見があります。なぜ女性が社会進出できないとマザコン少年が増えるのでしょうか。まず女は社会に出て活躍できないという母親自身の経験からどうせ娘に期待しても自分と同じ様になるだろうと思われるためどうしても息子の方へ過度の期待をするわけです。これが女性にマザコンがない理由です。そして自分が社会に出て活躍できなかった不満を自分の息子を通して解消しようとします。息子の手柄は自分の手柄になりますから息子に対して異常なほど干渉するという事になるわけです。しかし女性の社会進出を阻害してきた社会がマザコン少年を作り出した本当の原因なのでしょうか。私はむしろ自分以外の人間の経験によって自分の欲求を代償満足している母親に問題があると思います。つまり社会進出を阻害されたという挫折によって自分自身の経験によって欲求を満足することを拒否したわけです。彼女たちは真の欲求の満足を求めることをやめて自分以外の人間、彼女たちの場合だと息子、が自己実現することを助けることで彼女たち自身が自己実現したと感じるという疑似の自己実現で自分を満足させようとしているわけです。この行為は人生の中でさまざまな挫折を受け入れて成長していく途中でそれを捨てたことになります。彼女たちもまたマザコン少年の様に成長する途中で成長を拒否した大人になれなかった人たちなのでしょう。したがって私は社会進出の阻害よりも一つの挫折により自分自身の経験で欲求を満足していく生き方をやめた母親たちにマザコン少年を生みだす原因があると考えます。
以上五つの理由によりマザコン親子が増加しています。一から四番目の理由は外的な理由でありマザコン少年が生まれる直接的な原因とは言えません。重要であり個人的に解決可能なのは五番目の理由です。今後ますます一から四番目までの間接的な原因がマザコン少年を生み出す方向に進むことが予想されるため母親の意識に変化がなければマザコン少年の増加だけでなく現在マザコン少年より深刻な問題である母親の過保護、過干渉、過剰な期待のために生まれる自閉症や登校拒否の男の子の増加も推測できます。すなわち今日の現状がこのままの方向で進んで行けば未来の日本の家族には極端に言えば父親も母親も本当の意味での大人になりきれず家族の中大人が存在しなくなります。この現状を変えるために私たち、現在多少なりともマザコン少年である息子たちやこれから母親となる娘たち、は何をするべきでしょうか。息子たちのすべきことは母親を精神的に切り捨てることです。自分たちは母親の欲求の代償満足のために生きているのではないことを認識し今日までの母親の自分に対する行き過ぎた行為の理由が母親の愛情だけでなく彼女たちの息子を利用した疑似の自己実現を成し遂げるためであることを理解すべきです。そして母親を母親としてだけでなく一人の人間としても見ることができるようになればその人はすでにマザコン少年から抜け出しているでしょう。次に母親となるだろう娘たちやすでに母親である人たちのすべきことは自分の欲求を自分自身の行動で自分自身の経験として満たして行くことにより自己実現をして行くことを常に意識することです。息子の行為を通しての代償満足は本当の欲求の満足ではない事を知って下さい。私の友人の母親で大学に現在通っている人がいます。彼の母親は自分の欲求を自分自身で満足させ自己実現して行こうとしている母親の一人です。何でもいいから何か自分の目的を決めてそれに向って自分の力で進んで行く事を母親たちに望みます。
マザコン少年と母親になるだろう少女たちが今の現状を変えるためにこのすべきことをする事ができたら日本の家族からマザコン親子は消え去るでしょう。そして本当の大人へ彼らは成長することができるでしょう。本当の大人、つまり自分の自分のための自分による自己実現を目指すことができる人、になった彼らが作る家族はきっと少なくとも今日の家族の抱えている問題である母子密着や離婚や家庭力暴力などを解決できる家族だろうと私は思います。なぜならすべての問題の基本にあるのは両親が大人になりきれていない事にあると私は思うからです。
参考文献
●「マザコン少年の末路」 上野千鶴子
河合ブックレット