審査員講評
「内容のある作品群」
今回は「認知症」という病気だけにしぼ絞ったせいか、これと直接向かい合い、苦労し、よりよき対処法を考えた経緯などがよく記されていて、内容のあるものが多かった。 そのなかで当選作となった「父とのこと」は、介護をこえて父と子の熱い血のつながりまで描いて感動的であった。他に「家族じゃもん」も嫁と姑のあり方がユニークで、新鮮であった。 医療・研究部門では「認知症とのつきあい方」がバランスよく、かつ積極的で示唆に富んでいた。 |
「榊原作品に拍手!」
日本は高齢化社会、というより、大長寿時代を迎えている、という方がいい。健保、介護、年金・・・などが迷走しかかっているのも理解できる。世界中、どこを探しても、よきお手本はない。手探りで模索するしかない。
「認知症」もそんな問題の一つだ。それぞれの立場で経験を積み、公開し、工夫していかなくてはならない。そんなとき、30歳と若い榊原宏昌さんの「認知症は生活崩壊の元、とは言いたくない」という秀作に出会うことができてうれしかった。認知症とガップリ四つに組んでいる。「認知症になっても安心」な社会への道筋を、榊原さんは自分の仕事を通して深く考えている。そこが素晴らしい。
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「認知症に対する理解促進の重要性を痛感」
一般部門大賞受賞の梅津康治さんの「父とのこと」は、認知症という大変な病を通じて強まった家族間の絆、また今まで気づかなかったお父上の優しさにふれた大変感動的な作品でした。かけがえのない一年間が過ごせた早期発見の効果も、興味深く読ませて頂きました。医療研究部門大賞受賞の沖田裕子さんは、認知症は早期発見や正しい理解によって怖いというイメージが取り除ける病であるということを非常に分かりやすい表現で書かれています。きっと多くの人に勇気を与えることでしょう。皆さんのエッセイを拝読し、認知症に対する正しい理解がいかに重要かということを改めて痛感しました。 今年もたくさんのご応募ありがとうございました。 |
「高齢化社会に向かう指南書」
個人的なことですが、私たち夫婦の両親は4人とも健在で、認知症はこれから迎える人生の最終章にいずれかかわってくる重大なテーマです。その意味で受賞作を含むすべての作品が私には「指南書」のように感じられました。「父とのこと」からは親子の血の強いつながりを、「家族じゃもん」からは認知症に対するおおらかな態度を教えてもらいました。また「認知症は生活崩壊の元、とは言いたくない」は、治すのではなく悪化させなという考え方、長寿を喜べる安心できる社会づくりという提言が心に響く素晴らしい作品でした。 |
「家族の絆を感じさせる作品」
”脳がショートする前の状態に戻す”・・・。どきりとする表現でしたが、記憶から消滅した事実をうまく錯覚させ、認知症患者の不安を取り除いてあげること、でした。例えば、お味噌を本人が使った分加えておくことで、あたかも使っていないかのごとく見せてあげるのです。辛抱強い介護とその間の繊細な観察力が導いた、家族ならではの認知症介護の秘策だと思います。家族全員が、患者の不安を取り除き穏やかな精神状態を支えるために、思いやり工夫をしてあげる。家族として患者を受け止めてあげる。”家族じゃもん”は認知症介護での家族の絆の強まりを感じさせる作品でした。 |
最終選考にノミネートされた作品を掲載します
| 作品番号 | 部門 | 氏名 | タイトル |
| 7 | 一般 | 土居 淳史 | 頑張る母 |
| 17 | 一般 | 涼木登子 | ハードとソフトで いかがでしょう |
| 18 | 一般 | 滝沢 久季 | 罪 |
| 39 | 一般 | 鈴木 みのり | 私は、何で造られている? |
| 58 | 一般 | 高橋 恵美子 | (若年)認知症の早期発見を支えるもの |
| 71 | 一般 | 土屋 ひろみ | 認知症という機会 |
| 91 | 一般 | 匿名 | 小さな湯治場より 女将が見た認知症初期症状 |
| 106 | 一般 | 村瀬 圭 | 目の奥 |
| 113 | 一般 | 宮崎 眞理子 | 『認知症―早期発見』を考える |
| 31 | 医療・研究 | 森谷 陽子 | くらしに寄り添うこと |
| 66 | 医療・研究 | 高橋 昌子 | 認知症の創作劇で女優デビュー |
| 107 | 医療・研究 | 井手 芳彦 | 認知症診療の現場から |
| 115 | 医療・研究 | 本多 直美 | 返事の下書き |




作家 渡辺 淳一
元 文藝春秋取締役
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